大和屋リニューアルオープンまでの道筋をだいぶ記録することができてきました。自分の頭の整理にもなりますし、もしこの記録がどなたかのお役に立つことがあれば非常にうれしく思います。
とてもシンプルなことばかりをしてきましたので、このプロセスはきっといろいろなことに応用できると確信しています。
大和屋履物店に流し台がある理由
このようにブログを図示すると、だいぶ月日が流れているように感じる。しかし、2019年12月にスタートしたこのプロジェクトはまだ2020年の盛夏くらいまでしか過ぎていない。
そういえば、私が下駄屋の経営を手伝うと決めた時、同時に「店舗リニューアルがしたい!」という話が出た。やはり、とても大掛かりなプロジェクトなのである。だからこそ、ここまで入念な打ち合わせを重ねてきたわけだ。
仕事をしていると、「目的」と「手段」が混同してしまうことがある。
かっこいいお店にリニューアルすることは「目的」なのか「手段」なのか。答えは絶対に後者なのだが、気をつけないと目的になってしまうケースが多々ある。単に「かっこいいお店にしたい!」という感情が先行してしまうのだ。
大和屋履物店も最初の最初は「『スナック佳子』を開店したい!」と話していた。本当に懐かしい。そのときの、Luftの真喜志奈美さん(店舗デザイン担当)の困り果てた顔が今でも忘れられない。
ちなみに、大和屋の奥には下駄屋なのに流し台がある。これはスナックをいつか開店するための下準備なのだ。まだまだスナック計画は諦めていない。大和屋豆知識として覚えておいてほしい。
店舗リニューアルの目的とは
店舗の改装も「文化を継なぐ店」というビジョンに近づくための手段の一つでなくてはならない。
どんなお店にすれば、私たちのビジョンに近づく一歩にできるのか。その答えを見つけるために私たちは「自分たちを知ること」から始めた。
小倉進 × 小倉ヤス子 × 小倉佳子 × 小倉充子 × 船曵竜平
この掛け算を考えると、得意なことと苦手なことが出てくる。
この掛け算を考えたときに自分たちにしかできないものは何か。逆に自分たちにできなさそうなことは何か。それらを整理することから始めた。
まず苦手なことは下駄屋としての技術や専門性だ。職人は高齢かつ、いまから職人として修行を始める佳子さんでは、他の下駄屋と比べて劣ってしまうのは仕方ない。足にピッタリと挿げること(下駄と花緒を合わせること)はできるが、それ以上の修理などは現状難しそうだ。今後の課題である。
さらに、多くの商品を扱うのも無理があると感じた。大和屋は決して広くないからだ。それよりもある程度商品を絞って、その商品にまつわる魅力やストーリーをしっかり伝えるほうが得意だと考えた。品揃えよりも一つの商品をこだわって売る方を選んだ。
一方で、得意なこともある。まずは人脈。大和屋の長い歴史でお付き合いさせていただいている人の多さには驚いた。これは小倉家の大切な宝であると言っても過言ではない。それに加えて、充子さんと親交のある作家さんたちの人脈も加わるのだから、鬼に金棒であった。
いちおう、私の強みも加えたい。実家の旅館を長く手伝ってきた経験や会社員時代の経験から、「企画を形にする力」には長けている自負がある。
これらを組み合わせると「品揃えのワクワクではなく、ちがうワクワクで勝負」することになった。「大和屋にいくと新しい文化・商品に出会える!」というワクワクを届けられるようなお店作りを目指すことにした。下駄屋に足を運んで買い物を楽しんでくれる方々は、きっと他の和の文化にも興味があり、出会いたい人という仮説だ。
目標は「常にイベントが企画・開催されているお店」。これを達成するためには、改装が必要だった。
「文化を継なぐ」というビジョンがあり、それに近づくために「常にイベントが企画・開催されているお店」を目指した。これらがいわゆる「目的」である。
これらを実現するための手段として「改装・リニューアル」がある。お店の半分は、商品を絞った下駄をディスプレイするための内装。そして、半分は日本の素晴らしい作家さんたちの作品を紹介するための内装が必要だった。
だからこそ、今の大和屋の内装があり、イベントたくさんの大和屋となっているのだ。
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